雲亭日本古典図書室収録作品の一覧

福井

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おくのほそ道 / 松尾芭蕉 / 第53節 / 全56節

福井までは三里ほどなので、夕食を済ませて出たが、夕暮れの道はたどたどしい。

本文 現代語訳

福井は三里許なれば夕飯したゝめて出るにたそがれの路たど〳〵し爰に等栽といふ古き隱士有りいづれの年にか江戶に來て予を尋は遙十とせあまり也いかに老さらぼひて有るにや將死けるにやと人に尋ね侍ればいまだ存命してそこ〳〵とおしふ
福井までは三里ほどなので、夕食を済ませて出たが、夕暮れの道はたどたどしい。ここには等栽という昔なじみの隠士がいる。いつか江戸へ来て私を訪ねてから、もう十年以上になる。どれほど年老いたのか、それとも亡くなったのかと人に聞くと、まだ健在だと住まいを教えてくれた。
市中ひそかに引入りてあやしの小家に夕顏へちまのはへかゝりて鷄頭箒木に扉をかくす扨は此うちにこそと門を扣けば侘しげなる女の出でいづくよりわたり給ふ道心の御坊にやあるじは此あたり何某のもとに行きぬもし用あらば尋給へといふかれが妻なるべしとしらる昔物語にこそかゝる風情は侍れとやがて尋逢てその家に二夜泊りて名月はつるがのみなとにと旅だつ等栽もともに送らんと裾おかしうかゝげて路の枝折とうかれたつ
町の奥へ静かに入ると、粗末な小家に夕顔やヘチマが這いかかり、鶏頭や箒木が戸口を隠していた。ここだろうと門をたたくと、わびしげな女が出てきた。「どちらからお越しですか。修行のお坊さまでしょうか。主人は近くの知人の所へ行っています。用事がおありなら、お訪ねください」と言う。妻なのだろう。昔話にでもありそうな風情だと思った。やがて等栽と会い、その家に二晩泊まった。名月は敦賀の港で見ようと出発すると、等栽も送ってゆこうと、裾をおかしなほどからげ、道案内を買って出て浮き立っていた。
原文 / 転記元の異文注を整理

福井は三里許なれば夕飯したゝめて出るにたそがれの路たど〳〵し爰に等栽といふ古き隱士有りいづれの年にか江戶に來て予を尋は(一本ねしトアリ)遙十とせあまり也いかに老さらぼひて有るにや將死けるにやと人に尋ね侍ればいまだ存命してそこ〳〵とおしふ

市中ひそかに引入りてあやしの小家に夕顏へちまのはへかゝりて鷄頭箒木に扉をかくす扨は此うちにこそと門を扣けば侘しげなる女の出でいづくよりわたり給ふ道心の御坊にやあるじは此あたり何某のもとに行きぬもし用あらば尋給へといふかれが妻なるべしとしらる昔物語にこそかゝる風情は侍れとやがて尋逢てその家に二夜泊りて名月はつるがのみなとにと旅だつ等栽もともに送らんと裾おかしうかゝげて路の枝折とうかれたつ

AI試訳 / 専門家未校閲