栗の庵
この宿場の近くに、大きな栗の木陰を頼りに、世俗を離れて暮らす僧がいる。
本文 現代語訳
此宿の傍に大なる栗の木蔭をたのみて世をいとふ僧ありとちひろふ深山もかくやと閒に覺えられてものにかきつけ侍る
この宿場の近くに、大きな栗の木陰を頼りに、世俗を離れて暮らす僧がいる。栃の実を拾って暮らす深山も、このようであろうかと静かな心地がして、紙に書き付けた。
栗といふ文字は西の木とかきて西方淨土に便ありと
栗という文字は「西の木」と書くので、西方浄土に縁があるという。
行基ぼさつ一生杖にもはしらにも此木を用ひ給ふとかや
行基菩薩は、生涯、杖にも柱にもこの木を使ったと聞く。
世の人のみつけぬ花や軒の栗
世の人が気にも留めない花が、ここにはある。軒辺の栗の花よ。
原文 / 転記元の異文注を整理
此宿の傍に大なる栗の木蔭をたのみて世をいとふ僧ありとちひろふ深山もかくやと閒に覺えられてものにかきつけ侍る
栗といふ文字は西の木とかきて西方淨土に便ありと
行基ぼさつ(一本ぼさつのトアリ)一生杖にもはしらにも此木を用ひ給ふとかや
世の人のみつけぬ花や軒の栗
注
- 西の木
- 「栗」を「西」と「木」に見立てる文字遊びから、西方浄土への連想が生まれます。
AI試訳 / 専門家未校閲