雲亭日本古典図書室収録作品の一覧

那須野の道案内

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おくのほそ道 / 松尾芭蕉 / 第8節 / 全56節

那須の黒羽に知人がいるので、ここから野を横切り、近道をしようとした。

本文 現代語訳

那須の黑羽といふ所にしる人あればこれより野越にかゝりて直路を行んとす遙かに一村を見かけて行に雨ふり日くるゝ農夫の家に一夜をかりて明れば又野中を行そこに野飼の馬あり艸刈おのこに歎ぎよれば野夫といへどもさすがに情しらぬにはあらずいかゞすへきやされども此野は縱橫にわかれてうね〳〵敷旅人の道ふみたかへんあやしう侍れは此馬のとゞまる所にて馬をかへし給へとかし侍りぬちひさきものふたり馬の跡をしたひてはしる獨は小姬にて名をかさねと云聞なれぬ名のやさしかりければ
那須の黒羽に知人がいるので、ここから野を横切り、近道をしようとした。遠くに村を見つけて向かううち、雨が降り、日が暮れた。農家で一夜を借り、明くる日もまた野の中を行く。野放しの馬がいたので、草を刈る男に困り事を話した。農夫とはいえ、情けを知らないわけではない。「どうしたものか。この野は道が縦横に分かれて曲がりくねっています。旅の方が道を間違えては心配ですから、この馬が止まる所でお返しください」と馬を貸してくれた。小さな子が二人、馬のあとを追って走る。一人は女の子で、名をかさねという。聞き慣れない名がかわいらしかったので、
かさねとは八重撫子の名なるべし
かさねとは、幾重にも花びらを重ねる撫子の名なのでしょう。
やがて人里に至ればあたひを鞍壺に結付て馬をかへしぬ
やがて人里に着くと、鞍の中央に礼金を結び付けて馬を返した。
原文 / 転記元の異文注を整理

那須の黑羽(一本黑羽根トアリ)といふ所にしる人あればこれより野越にかゝりて直路を行んとす遙かに一村を見かけて行に雨ふり日くるゝ(一本コノるナシ)農夫の家に一夜をかりて明れば又野中を行そこに野飼の馬あり艸刈おのこに歎ぎよれば野夫といへどもさすがに情しらぬにはあらずいかゞすへきやされども此野は縱橫にわかれてうね〳〵(一本うい〳〵トアリ)敷旅人の道ふみたかへんあやしう侍れは此馬のとゞまる所にて馬をかへし給へとかし侍りぬちひさきものふたり馬の跡をしたひてはしる獨は小姬にて名をかさねと云聞なれぬ名のやさしかり(一本かりノ二字ナシ)ければ

かさねとは八重撫子の名なるべし

やがて人里に至ればあたひを鞍壺に結付て馬をかへしぬ

注

かさね
子どもの名と、花びらの重なる八重撫子を結んでいます。

AI試訳 / 専門家未校閲