雲亭日本古典図書室収録作品の一覧

日光

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おくのほそ道 / 松尾芭蕉 / 第6節 / 全56節

四月一日、日光山に参拝した。

本文 現代語訳

卯月朔日御山に詣拜す徃昔此御山を二荒山とかきしを空海大師開基の時日光と改給ふも千歲未來をさとり給ふにや今此御光 一天にかゞやきて恩澤八荒にあふれ國民安堵の栖穩かなり猶憚多くて筆をさし置ぬ
四月一日、日光山に参拝した。昔はこの山を二荒山と書いたが、弘法大師空海が開いたときに日光と改めたという。千年先の未来まで見通しておられたのだろうか。今、その光は空いっぱいに輝き、恵みは国の隅々まで満ち、人々の暮らしは安らかである。これ以上は恐れ多く、筆を置く。
あらたふと靑葉若葉の日の光
ああ、なんと尊いことか。青葉にも若葉にも降り注ぐ、日の光よ。
黑髮山はかすみかゝりて雪いまだ白し
黒髪山には霞がかかり、雪がまだ白く残っている。
剃すてゝくろかみ山に衣かへ  曾良
髪を剃り捨て、黒髪山のもとで墨染めの衣に替える。 曾良
曾良は河合氏にして惣五郞と云り芭蕉の下葉に軒をならべて予か薪水の勞をたすくこのたび松島象潟の眺めともにせん事を悅びかつは羈旅の難をいたはらんとたびだつ曉髮を剃て墨染にさまをかへ改て惣五を宗悟とすよりて黑髮山の句有り衣かへの二字力ありて聞ゆ
曾良は河合氏で、惣五郎という。私の庵のすぐ隣に住み、水汲みや薪の用意を助けてくれる。このたびは松島や象潟の景色を一緒に見ることを喜び、旅の苦労も支えようと、出発の朝に髪を剃って僧の姿になった。惣五という名も宗悟と改めた。それで黒髪山の句を詠んだのである。「衣かへ」の二字が、力強く響く。
原文 / 転記元の異文注を整理

卯月朔日御山に詣拜す徃昔此御山を二荒山とかきしを空海大師開基の時日光と改給ふも(一本もナシ)千歲未來をさとり給ふにや今此御光 一天にかゞやきて恩澤八荒にあふれ國民安堵の栖穩かなり猶憚多くて筆をさし置ぬ

あらたふと靑葉若葉の日の光

黑髮山はかすみかゝりて雪いまだ白し

剃すてゝくろかみ山に衣かへ  曾良

曾良は河合氏にして惣五郞(一本良トアリ)と云り芭蕉の下葉に軒をならべて予か薪水の勞をたすくこのたび松島象潟の眺め(一本なかめをトアリ)ともにせん事を悅びかつは羈旅の難をいたはらんとたびだつ曉髮を剃て墨染にさまをかへ改て惣五を宗悟とすよりて黑髮山の句有り衣かへの二字力ありて聞ゆ

注

日光の「光」
日光の景色と、徳川家康を祀る聖地への賛美が重なる文章です。弘法大師の改名は本文中の伝承。

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