雲亭日本古典図書室収録作品の一覧

武隈の松

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おくのほそ道 / 松尾芭蕉 / 第21節 / 全56節

武隈の松を見ると、目の覚める思いがした。

本文 現代語訳

武隈の松にこそ目さむる心地すれ根は土際より二木にわかれて昔のすがたうしなはずとしらる先能因法しおもひ出往昔陸奧守にて下りし人此木を伐て名とり川の橋杭にせられたるなどあればにや松は此たび跡もなしとは詠みたり代々あるは伐りあるひは植づきなどせしと聞くに今はた千歲のかたちとゞのほひてめでたき松のけしきになん侍し
武隈の松を見ると、目の覚める思いがした。根は地面の際から二本に分かれ、昔の姿を失っていないと分かる。まず能因法師を思い出した。昔、陸奥守として来た人がこの木を切り、名取川の橋の杭にしたという。それで能因も「松は此たび跡もなし」と詠んだのだろうか。代々、切ったり植え継いだりしたと聞くが、今また長い年月を経た姿が整い、見事な松の景色であった。
武隈の松みせ申せ遲さくら  擧白
遅桜よ、武隈の松を旅人にお見せしておくれ。 挙白
とせんべちしたりければ
と、挙白が餞別の句を贈ってくれたので、
櫻より松は二木を三月こし
桜のころに旅立ってから、旧暦の三月、四月、五月をまたぎ、ようやく二木の松に会えたことだ。
原文 / 転記元の異文注を整理

武隈の松にこそ目さむる心地すれ根は土際より二木(木一本本トアリ)にわかれて昔のすがたうしなはずとしらる先能因法し(一本し師トアリ一本づトアリ)おもひ出往昔陸奧守にて下りし人此木を伐て名とり川の橋杭にせられたるなどあればにや松は此たび跡もなしとは詠みたり代々あるは伐りあるひは(一本ひナシ)植づきなどせしと聞くに今はた千歲のかたちとゞのほひてめでたき松のけしきになん侍し

武隈の松みや申せ遲さくら  擧白

とせんべち(一本擧白といふものゝせんへち云々トアリ)したりければ

櫻より松は二木を三月こし

注

三月こし
旧暦三月の出発から、四月を経て五月に至ったという月の数え方です。満三か月、約九十日が過ぎたという意味ではありません。「松」には、会うのを「待つ」気持ちも響きます。
句の表記
転記元の「松みや申せ」は、杉浦正一郎校註の本文「松みせ申せ」を参照し「お見せしておくれ」と訳しました。原文欄もこの読みを採り、転記元は下に保存しています。

AI試訳 / 専門家未校閲