雲亭日本古典図書室収録作品の一覧

雲巌寺

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おくのほそ道 / 松尾芭蕉 / 第10節 / 全56節

この国の雲巌寺の奥には、仏頂和尚が山に住んだ庵の跡がある。

本文 現代語訳

當國雲岸寺のおくに佛頂和尙山居の跡あり
この国の雲巌寺の奥には、仏頂和尚が山に住んだ庵の跡がある。
たてよこの五尺にたらぬ草の庵
縦も横も五尺に足りない草の庵。
むすぶもくやし雨なかりせば
雨さえ降らなければ、こんな庵を結ぶことさえ惜しいのだが。
と松の炭して岩にかきつけ侍りと聞へ給ふ其跡見んと雲岸寺に杖をひけば人にすゝんでともにいざなひ若き人多く道の程うちさわぎて覺へずかの麓に至る
和尚はそう松の炭で岩に書き付けた、と話してくださった。その跡を見ようと雲巌寺へ杖をついて向かうと、人々も進んで同行した。若い人が多く、道すがらにぎやかに話すうち、いつの間にか山の麓に着いた。
山はおくあるけしきにて谷道遙に松杉黑く苔したゝりて卯月の天今猶寒し十景つくる所橋を渡て山門に入る扨かのあとはいづくの程にやと後の山によぢのほれは石上の小庵岩窟にむすびかけたり妙禪師の死關法雲法師の石室を見るが如し
山はいかにも奥深く、谷沿いの道は遠く続く。松や杉は黒々と茂り、苔は水を滴らせ、四月の空気はまだ寒い。景色のよい橋を渡り、山門に入る。さて庵の跡はどのあたりかと裏山によじ登ると、岩の上に小さな庵が、岩窟に寄り添うように建っていた。中国の妙禅師や法雲法師の修行の石室を見るようである。
木啄も庵はやぶらす夏木立
啄木鳥も、この庵だけは破らないだろう。夏の木立の中で。
と取あへぬ一句を柱に殘し侍し
と、とっさに浮かんだ一句を柱に残した。
原文 / 転記元の異文注を整理

當國雲岸寺のおくに佛頂和尙山居の跡あり

たてよこの五尺にたらぬ草の庵

むすぶもくやし雨なかりせば

と松の炭して岩にかきつけ侍りと聞へ給ふ其跡見んと雲岸寺に杖をひけば人にすゝんでともにいざなひ若き人多く道の程うちさわぎて覺へずかの麓に至る

山はおくあるけしきにて谷道遙に松杉黑く苔したゝりて卯月の天今猶寒し十景つくる所橋を渡て山門に入る扨かのあとはいづくの程にやと後の山によぢのほれは石上の小庵岩窟にむすびかけたり妙禪師の死關法雲法師の石室を見るが如し

木啄も庵はやぶらす夏木立

と(一本コノとナシ)取あへぬ一句を柱に殘し侍し

注

仏頂和尚
芭蕉が親しくした禅僧。庵の狭さを詠む歌にも、必要最小限で暮らす姿が表れています。

AI試訳 / 専門家未校閲