遊行柳
あの「清水が流れる柳」は蘆野の里にあり、田のあぜに残っている。
本文 現代語訳
また、清水流るるの柳は、蘆野の里にありて、田の畔に残す。この所の郡守戸部某の「この柳見せばや」など、折々にのたまひ聞こえ給ふを、いづくのほどにやと思ひしを、今日この柳のかげにこそ立ち寄り侍りけれ。
あの「清水が流れる柳」は蘆野の里にあり、田のあぜに残っている。この土地を治める戸部という人が、折に触れて「この柳をお見せしたい」と言ってくださっていた。どのあたりだろうと思っていたが、今日、その柳の陰に立ち寄ることができた。
田一枚うへて立ち去る柳かな
田んぼ一枚の田植えが終わるほど、柳のそばで時を過ごした。そして立ち去る。
原文 / 転記元の異文注を整理
亦淸水ながるゝの(一本なかるゝとのトアリ)柳は蘆野の里に有て田の畔にのこす此所の郡守戶部某の此柳みせばやなど折〳〵にの給ひ聞へ給ふをいづくの程にやと思ひしを今日此柳のかげにこそ立より侍りけれ(け一本つトアリ)
田一枚うへて立さる柳かな
注
- 清水流るるの柳
- 西行の歌の言葉を踏まえる。「新古今和歌集」第262歌と読み比べられる。
- 田一枚
- ここでは、田植えが進む間の滞在を詠んだものとして訳した。芭蕉自身が田植えをした、と本文にない動作は補っていない。
- 底本の読み
- 本資料は「立より侍りけれ」を採り、異本の「つ」を注記する。他の版との違いを原文欄に残した。
AI試訳 / 専門家未校閲