雲亭日本古典図書室収録作品の一覧

染木正信

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兎園小説 / 曲亭馬琴ほか 兎園会の会員 / 第三集 第7話 / 輪池堂 屋代弘賢

文禄の役で捕らえられ千姫に仕えた朝鮮人の姉弟と染木家の由来。

本文 現代語訳

染木正信
染木正信
御天守番飯島平次郎の話。「予が相番に染木某が祖先は、韓人にして李氏なり。豊太閤の時小童にて、姉とともに片桐市正にいけどられて皇国に来れり。市正この二人に唐山の童子の衣服をきせて台にのせ、天樹院君にまゐらせたり。姉は成長して早尾といふ。弟は老女染木が養子になりて、染木八大夫正信といひて、両人ともに生涯つかへ奉り、その子を利右衛門正美といひて、これもおなじ君につかへて添番をつとめたり。しかるに実子なくて血脈は絶えたりとぞ。家の伝ふる所は、族称本氏ともに染木なり」といへり。
御天守番の飯島平次郎の話。私と同じ番の染木某の先祖は朝鮮の人で、李氏である。豊臣太閤の時に幼い子どもで、姉とともに片桐市正に生け捕られて日本に来た。市正はこの二人に中国の子どもの衣服を着せて台に載せ、天樹院さまに献上した。姉は成長して早尾といった。弟は老女染木の養子になって染木八大夫正信と名乗り、二人とも生涯お仕えし、その子を利右衛門正美といって、これも同じ主君に仕えて添番を務めた。しかし実子がなく血筋は絶えたという。家に伝わるところでは、族称も本姓もともに染木だと言っていた。
文政八年三月朔 輪池
文政八年三月一日 輪池
原文 / 昭和女子大学本の字句を採り、正字体を保持、振り仮名を外す

染木正信

御天守番飯嶋平次郞話。予が相番に染木某が祖先は、韓人にして李氏なり。豐太閤の時小童にて、姊とゝもに片桐市正にいけどられて皇國に來れり。市正此二人に唐山の童子の衣服をきせて臺にのせ、天樹院君にまゐらせたり。姊は成長して早尾といふ。弟は老女染木が養子になりて、染木八大夫正信といひて、兩人ともに生涯つかへ奉り、その子を利右衞門正美といひて、是もおなじ君につかへて添番をつとめたり。然るに實子なくて血脈は絕えたりとぞ。家の傳ふる所は、族稱本氏ともに染木なりといへり。

文政八三朔 輪池

注

写本の位置
写本は3168の34カット目左ページの2行目から35カット目右ページの4行目まで。35カット目右ページの5行目から第8話「むじなたぬき」が始まる。
校合
「染木八大夫正信」は写本の読み。活字本系は「染木八右衞門正信」とする。原寸で切り出し、八大夫と読んだ。
校合
「豐太閤の時小童にて」は写本の読み。活字本系は「豐太閤の時に、童にて」とする。
校合
「御天守番飯嶋平次郞」の嶋は写本の字形をそのまま採った。活字本系は「飯島」とする。
注記
輪池は屋代弘賢。御天守番は江戸城の天守を守衛する職名。片桐市正は片桐且元、天樹院は徳川家康の孫で豊臣秀頼の妻の千姫。添番は千姫付きの番役と解した。染木正信は文禄慶長の役で連行された朝鮮人で、千姫に仕えた人物として人名辞典に載る。人名の特定は雲亭の推定で未確認。

AI試訳 / 専門家未校閲