謡曲中の小釈
謡曲「芭蕉」の漢詩句と「三井寺」の発句の出典を、二つの随筆から示す。
本文 現代語訳
乙酉十月兎園会 平安 角鹿桃窓
乙酉十月の兎園会 平安 角鹿桃窓
「芭蕉」の謡曲に「近水楼台先づ月を得、向陽の花木春と為り易し」とす。宋人蘇麟が作にして『清夜録』に出でたりと『孔雀楼筆記』に見ゆ。また「三井寺」の謡曲に「月は山風ぞしぐれに鳩の海」といへるは、宗祇の発句なるよし、『幽遠随筆』に載せたり。
謡曲「芭蕉」に「水に近い楼台はまず月を得、日に向かう花木は春になりやすい」という句がある。これは宋の蘇麟の作で『清夜録』に出ていると『孔雀楼筆記』に見える。また謡曲「三井寺」に「月は山風ぞしぐれに鳩の海」とあるのは宗祇の発句だと『幽遠随筆』に載っている。
原文 / 昭和女子大学本の字句を採り、正字体を保持、振り仮名を外す
乙酉拾月兎園會 平安 角鹿桃窓
芭蕉の謠曲に近水樓臺先得月、向陽花木易爲春とす。宋人蘇麟が作にして淸夜錄に出たりと孔雀樓筆記に見ゆ。また三井寺の謠曲に月は山かぜぞしぐれに鳩の海といへるは、宗祇の發句なるよし、幽遠隨筆に載せたり。
注
- 写本の位置
- 写本は3171の58カット目左ページ。本文には題がなく、冒頭に「乙酉拾月兎園會 平安 角鹿桃窓」と提出の記しがある。59カット目から次の話「眞葛の老女」が始まる。
- 注記
- 目録の題は「謡曲中の小釋」、披講者は前の話と同じ青李菴で、目録では名を略す。
- 校合
- 「淸夜錄に出たり」は写本の読み。活字本系テキストは「淸錄」とする。原寸で確かめた。『清夜録』は宋の兪文豹の随筆で、蘇麟の句の出典として知られる。
- 校合
- 「山かぜぞしぐれに鳩の海」は写本の字句。活字本系テキストは「山かせぞ」とする。「鳩の海」は写本の字形どおりで、謡曲「三井寺」の詞章では琵琶湖を指す「鳰の海」。写本の字を採り、注記にとどめた。原寸で確かめた。
- 校合
- 私家版はこの話と前の「中川喜雲京童の序の辨」を1記事にまとめる。出典は前の話の sources を見る。
- 注記
- 『孔雀楼筆記』は清田儋叟の随筆。『幽遠随筆』は入江昌喜の随筆。宗祇は室町時代の連歌師。
AI試訳 / 専門家未校閲