食と暮らし / 江戸
江戸時代のバズレシピPart 1 — 豆腐百珍
2026年10月17日更新
湯豆腐から意外な料理まで、豆腐だけで一冊。江戸時代の『豆腐百珍』は、百の料理を六つに分類した本です。身近な材料が、読む楽しみに変わります。
画像はイメージです手の込んだ料理だけが上位とは限りません。「絶品」の中には、豆腐の持ち味を楽しむ湯やっこも入っています。
01豆腐だけで、百の料理
天明2年(1782)、大坂で刊行された『豆腐百珍』は、豆腐を使う百の料理を集めた本です。百品は「尋常品」「通品」「佳品」「奇品」「妙品」「絶品」の六つに分類されています。1、2
ふだんの料理、よく知られた料理、見た目もよい料理、意表をつく料理。分類を眺めるだけでも、どんな豆腐料理か想像したくなります。
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02「絶品」は、豪華とは限らない
国立国会図書館月報の紹介によると、絶品に選ばれた七品には湯やっこや鞍馬豆腐が含まれます。材料を飾り立てるだけでなく、豆腐そのものの持ち味を楽しむ料理も高く置かれているのが面白いところです。2
「奇品」や「妙品」という名前にも、読み手を楽しませる工夫が見えます。料理の手順を調べる本としても、料理を想像して読む本としても開けます。
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03料理人だけでなく、読む人へ
食文化史の研究は、この時代の料理書が、専門の料理人だけでなく一般の読者にも向かうようになったことを指摘します。『豆腐百珍』は材料を一つに絞り、一冊にまとめた代表的な本として挙げられています。1
翌年には『豆腐百珍続篇』が出ました。ほかにも卵や甘藷を扱った百珍物が登場します。ただし、現在の売上ランキングでいう「ベストセラー」とは意味が違います。
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04「あげながし」を原文で読む
「絶品」に入る「あげながし」は、揚げた豆腐を水に移して油を抜き、さらに葛湯で煮る料理です。揚げて終わりではなく、もうひと手間かけるところに工夫があります。3
原文には、同じ本に載る「湯やっこ」と同じ煮加減にするよう書かれています。料理同士を行き来しながら読めるのも、この本の面白さです。下の原文で手順を確かめてみましょう。3
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『豆腐百珍』絶品「あげながし」
作者:醒狂道人(何必醇)
原文(該当部分)
よきほどに切り香油(ごまのあぶら)にて揚げ、あげ鍋より直に水へうつし入れて油気を去り、別に葛湯をくらくら沸たたしをき、油ぬき豆腐を入れ、湯やつこの烹調(にかげん)にて山葵味噌かけ也
現代語訳
豆腐を適当な大きさに切り、ごま油で揚げる。揚げ鍋からすぐに水へ移して油気を取り除く。別の鍋で葛湯を煮立て、油を抜いた豆腐を入れる。「湯やっこ」と同じ煮加減で仕上げ、わさび味噌をかける。
本文翻刻
東京都立図書館の紹介に掲載された「あげながし」の引用範囲です。全巻の翻刻ではありません。
よきほどに切り香油(ごまのあぶら)にて揚げ、あげ鍋より直に水へうつし入れて油気を去り、別に葛湯をくらくら沸たたしをき、油ぬき豆腐を入れ、湯やつこの烹調(にかげん)にて山葵味噌かけ也
同館の掲載表記に基づきます。
原典の掲載ページを開く ↗
出典・訳について
3. 『豆腐百珍』絶品「あげながし」
本文・目次へ戻る ↑表記・訳の注記
東京都立図書館の紹介ページにある原文引用を、読み注も含めて掲載した。原本の字体を再現した翻刻ではない。「葛湯」は葛粉を使う湯。「湯やつこ」は同書第97品の料理名で、この一節はその煮加減を参照している。現代語訳はAIの試訳で、専門家の校閲は未実施。
「香油」はごま油、「山葵」はわさびです。「湯やつこの烹調」は、同じ本の「湯やっこ」と同じ煮加減にするという指示。料理名が、別のレシピへ進む手がかりになっています。
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出典と原典の画像
元の記録や研究を、自分の目で確かめられます。
原典の画像を開く
画像 I01 『豆腐百珍』
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国文学研究資料館 / 41丁(資料集の記録)
資料の書誌
該当箇所の画像は未確認です。
画像 I02 『豆腐百珍』
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東京学芸大学附属図書館(望月文庫本) / 9丁と31丁、計40丁(資料集の記録)
資料の書誌
該当箇所の画像は未確認です。
画像 I03 『豆腐百珍』
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東京都立中央図書館(加賀文庫) / 醒狂道人著、藤屋善七等、天明2年(1782)刊、1冊。請求記号 加3697
資料の書誌
該当箇所の画像は未確認です。
参考にした研究・関連文献
論文 P01 江戸時代の豆腐ブーム 『豆腐百珍』を中心に
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吉田雅子 / 武蔵野日本文学 / 通巻24、2015年3月16日 / 73-77(5ページ)
関連文献(本文未確認)
国文研の書誌
論文 P02 近世の食生活に関する研究 第三報
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猪俣節子 / 椙山女学園大学研究論集 / 19、1988年2月 / 国文研DBに記載なし
関連文献(本文未確認)
国文研の書誌
論文 P03 『豆腐百珍』『豆腐百珍続編』の熟字
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余田弘実 / 国語文字史の研究 / 2、1994年10月 / 国文研DBに記載なし
関連文献(本文未確認)
国文研の書誌
1. 論文 P04 アジアのなかの江戸文化 食文化を中心に
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原田信男 / 日本食生活学会誌 / 17巻1号、2006年 / 6-10(5ページ)
記事で参照した文献
書誌・DOI | 本文掲載ページ
論文 P05 江戸時代から現在までのでんがく料理の移り変わり
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八田陽子 / 会誌食文化研究 / 11、2015年 / 25-34
記事で参照した文献
書誌・DOI | 本文掲載ページ
論文 P06 江戸時代における豆腐の消費動向を探る 近江国滋賀郡本堅田村の「通」を手がかりに
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三浦加帆 / 会誌食文化研究 / 19、2023年 / 1-13
記事で参照した文献
書誌・DOI | 本文掲載ページ
論文 P07 萬寳料理秘密箱「玉子百珍」に掲載された卵料理について
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名倉秀子 / 十文字学園女子大学紀要 / 51、2020年度(CiNii表記は2021年3月) / 71から
記事で参照した文献
書誌・DOI | 本文掲載ページ
2. 論文 P08 今月の一冊 豆腐百珍 江戸の味を楽しむ
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永村恭代 / 国立国会図書館月報 / 627、2013年6月 / 2-3
記事で参照した文献
本文掲載ページ
論文 P09 「廣大和本草」及「豆腐百珍」の著者に就て
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津山尚 / 植物研究雑誌 / 20巻4号、1944年 / 229-230
記事で参照した文献
書誌・DOI
論文 P10 天明期料理文化の性格 料理本『豆腐百珍』の成立
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原田信男 / 藝能史研究 / 70、1980年7月 / 20(開始ページ。資料集の記録)
関連文献(本文未確認)
書誌・DOI
論文 P11 歴史的典籍NW事業と江戸料理 企業とのコラボの可能性と課題
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松原恵、小宮山史、山本和明 / 情報の科学と技術 / 68巻6号、2018年6月 / 285-290
記事で参照した文献
書誌・DOI | 本文掲載ページ
解釈と、まだ確かめられていないこと
豆腐料理の分類と出版については掲載した研究・解説に基づきます。販売部数は確定していません。原文は東京都立図書館の紹介ページに掲載された『豆腐百珍』の引用表記を採用しました。
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